メールマガジン2011年11月
メールマガジン「人事・総務レポート」
2011年11月 Vol.34
1.人事・総務ニュース
10月のできごと
派遣社員の過労自殺で賠償判決(最高裁で遺族側の勝訴が確定)
大手光学機器メーカーの工場(埼玉県)に派遣されていた男性(当時23歳)が、過労が原因でうつ病になり自殺したのは、派遣元と派遣先双方の責任であるとして、遺族が総額約1億4,000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷は9月30日、両社の上告を退ける決定をしました。
これにより、総額約7,000万円の支払いを命じた二審判決(東京高裁)が確定しました。男性は窓や休憩スペースのない部屋で製品検査業務を担当していましたが、15日連続勤務や夜勤での時間外労働などで過労となり、派遣元会社に退職を申し入れていましたが認められませんでした。このことから二審では、自殺は過労によるうつ病が原因であるとし、派遣元と派遣先双方に注意義務違反があったと認めていました。
地域別最低賃金の改定(全国平均で7円の引き上げ)
このほど、平成23年度の地域別最低賃金が下表のとおり改定されました。 すべての都道府県で時間額が1円から18円の間での引き上げとなっており、全国加重平均額は、昨年度と比べて7円アップの737円となっています。
新たな「年金記録回復基準」を追加 (賞与支払届の提出もれなど)
日本年金機構は、申立てに応じて年金記録の「もれ」や「誤り」を迅速に回復するために設けられている「年金記録回復基準」に、10月1日から新たな基準を追加しました。 今回追加されたのは、賞与支払届の提出もれや、転勤(人事異動)に伴う届出の誤りが原因で、厚生年金保険料が給与から天引きされていたにもかかわらず、年金記録に「もれ」や「誤り」が生じている場合などです。
なお、従来より、国民年金の未納期間の記録に関する本人からの申立てや、厚生年金適用事業所の従業員であった人が標準報酬月額の記録などについて不適正な訂正が行われたとする申立てなどについての基準が設けられています。
高額療養費の自己負担を軽減へ 厚労省見直し案(10月13日)
厚生労働省は、高額療養費制度に関して、中低所得者層を中心に自己負担限度額を引き下げる見直し案を発表しました。従来の月額上限に加えて年額上限も設定する考えで、70歳未満の場合、年収「約800万円以上」で年額99万6,000円、「約300万円~800万円程度」で同50万1,000円などとなっている。2015年度までの実施を目指すとしています。
「主婦年金救済」で臨時国会に法案提出へ(10月4日)
厚生労働省の政務三役は、いわゆる「主婦年金救済」(会社員である夫の退職時に国民年金への変更を届けていなかった専業主婦の救済)の問題に関して、救済法案を臨時国会に提出する方針を明らかにしました。
(1)保険料未納期間を加入期間として扱うが年金額には反映させない
(2)保険料の追納を直近10年分に限り認める、などが柱となります。
完全失業率が4.3%に改善(9月30日)
総務省が8月の完全失業率を発表し、4.3%(前月比0.4ポイント改善)となったことがわかりました。厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率は0.66倍(同0.02ポイント上昇)と3カ月連続で改善しました。
2.社会保険ワンポイント・ゼミナール
年金定期便が届かない時は… (厚生年金・国民年金)
「ねんきん定期便」が自宅に届いたことが無いという社員がいます。日本年金機構に問い合わせたら、現住所が登録されている住所と違うので、会社を通して住所変更の手続きをすれば自宅に届くことになるとのことです。 社員とその家族の住所変更の届出は、会社の義務なのでしょうか?また、未届けの社員がいるかどうか調べたいときにはどうすればいいのでしょうか?厚生年金被保険者は住所を届け出る
「ねんきん定期便」や「年金裁定請求書」(年金の受給開始年齢の直前に送られます)が年金の加入者に確実に届けられるためには、年金の個人情報を管理する日本年金機構に正しい住所が登録されていることが必要です。 厚生年金保険加入者の住所の届出に関しては、厚生年金の被保険者資格取得と同時に届け出るものと、住所が変わるつど届け出るものがあります。
具体的には、資格取得届に現在の住所を書き添えることで、届出が済んだことになります。この場合、もしその被保険者の住所がすでに登録されている住所と異なっていれば、資格取得届に記載された住所に変更されます。
また、資格取得の後に住所が変わった場合には、まず被保険者が事業主に申し出ることが必要で、事業主は被保険者から住所変更の申出を受けた場合には、すみやかに変更後の住所を届け出ることが必要となります。
被扶養配偶者の場合は
厚生年金に加入する事業所においては、事業主は被保険者に扶養される配偶者(国民年金第3号被保険者)の住所についても届け出ることが必要となっています。
この届出は、国民年金第3号被保険者の資格取得の際に行い、住所が変わった場合にも、被保険者と同様に、そのつど変更の届出が必要です。
被扶養配偶者以外の家族は
健康保険の被扶養配偶者以外の家族については、事業主が年金制度上の住所の届出を行う必要はありません。 扶養される家族が20歳以上であれば、年金制度では、「国民年金第1号被保険者」にあたりますので、原則として本人が市区町村に届出(異動届または転入届・転出届)を行うことで、自動的に年金制度上の住所登録が変更されることになっています。
ワンポイントチェック
日本年金機構に登録されている厚生年金の被保険者とその被扶養配偶者の住所を確認するためには、所定の申出書により管轄の年金事務所に申し出れば、「住所一覧表」の提供が受けられます。とくに、マンションやアパートの名称や室番号が漏れているような場合には、「ねんきん定期便」が届かないこともありますので、「住所一覧表」でチェックすることも必要となるでしょう。
3.人事・総務 参考資料 「平均給与」3年ぶりにプラス 国税庁の「民間給与実態統計調査」
このほど国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、民間企業に平成22年1年間を通じて勤務した給与所得者(パート・アルバイト等の非正規雇用者を含む)が受け取った平均給与(※)は412万円で、前年を6万1,000円(1.5%)上回り、3年ぶりに増加したことが分かりました。ただ、来年の同調査結果には東日本大震災の影響が出てくるだろう、との厳しい見方もあるようです。
※「平均給与」とは、給与支給総額を給与所得者数で除したもの
平均所得
1年を通じて勤務した給与所得者数は4,552万人(男性2,729万人、女性1、823万人)で、前年に比べ46万人(1.0%)増加しています。また、給与所得者1人当たりの平均給与は412万円で、同6万1,000円(1.5%)増加しています。 これを男女別にみると、男性507万4,000円、女性269万3,000円で、男性は7万7,000円(1.5%)、女性は6万2,000円(2.4%)それぞれ増加となっています。
また,平均給与412万円の内訳をみると,平均給料・手当は353万9,000円(男性433万5,000円、女性234万9,000円)で,平均賞与は58万1,000円(男性73万9,000円,女性34万4,000円)となっています。

事業所規模の平均給与
10人未満の事業所では335万7,000円(男性414万5,000円,女性244万9,000円)であるが、5,000人以上の事業所では489万5,000円(男性644万6,000円、女性254万3,000円)となっています。(右の表参照)
納税者数及び税額
1年を通じて勤務した給与所得者4,552万人のうち、源泉徴収により所得税を納税したのは3,755万人で、その割合は82.5%となっています。また、その税額は7兆2,473億円で前年に比べ1,233億円(1.7%)増加し、納税者の給与総額に占める税額の割合は4.26%となっています。
給与階層別分布
1年を通じて勤務した給与所得者4,552万人について、給与階層別分布をみると、300万円超400万円以下が823万人(18.1%) で最も多く、次いで200万円超300万円以下が800万人(17.6%)となっています。 これを男女別にみると、男性は300万円超400万円以下が532万人(19.5%)で最も多く、次いで400万円超500万円以下が492万人(18.0%)となっています。 女性は100万円超200万円以下が488万人(26.8%)で最も多く、次いで200万円超300万円以下が429万人(23.5%)となっています。
業種別の平均給与
最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の696万円、次いで「金融業、保険業」の589万円で、最も低いのは「宿泊業、飲食サービス業」の247万円となっています。(下図参照)
給与階層別の税額
1年を通じて勤務した年間給与額800万円超の給与所得者は365万人で、給与所得者全体の8.0%にすぎませんが、その税額は合計4兆3,639億円で全体の60.2%を占めています。
4.労務管理 年休付与日を統一したら、日数不足に?
年次有給休暇(年休)は、労働基準法(第39条)に付与の要件や付与すべき日数が具体的に定められていますが、原則として労働者の雇い入れ日をもとに、一人ひとり付与すべき日が決まるので、管理が煩雑になってしまうことがあります。
このようなことから、付与日や付与日数が法律の基準を下回らないようにすれば、年休の基準日を統一することや、それに伴い便宜的に年休を分割して付与するような取扱いをすることも差し支えないものとされています。
ただし、この場合には次のことに注意しなければなりません。
- 法定の基準日以前に付与する場合の年休の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなす必要があること。
- 次年度以降の年休の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ、またはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げる必要があること。
今回のケ-スでは、付与日については、2回目以降の付与日(4月1日)を法基準の付与日(次の年の1月1日)よりも繰り上げているので問題はないのですが、2回目の付与日数が「3日」なので、本来の付与日数の「11日」よりも少なく、法基準の付与日の1月1日前までは、通算した日数では法基準を上回りますが、1月1日から3月31日の期間だけみると、通算した日数が法基準を下回ることになってしまいます。
したがって、今回の場合、たとえば、2回目の付与となる翌年の4月1日には3日ではなく11日付与し、次年度以降も法定どおりに日数を加算するようにすれば、問題ないことになります。
このように、法定の基準を下回らないように年休の基準日を統一するためには、どうしても付与日を繰り上げるだけではなく付与日数にも配慮する必要があるほか、入社月によって著しい不公平が出ないように、初年度には入社月に応じた付与日数も同時に設定することが必要となるでしょう。