メールマガジン2019年01月
メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年01月 Vol.120
1.人事・総務ニュース
外国人受入れへ態勢整備 ~方針作成や協議会も 地方自治体~
労政府は、外国人材の就労拡大を目指す入管法改正案を臨時国会に提出し、会期内に成立の見通しです。こうした流れを受け、新たな取り組みをスタートさせる地方自治体が増えています。
長野県は景気が回復する一方で人材流出が進行しているため、「長野県就業促進・働き方改革戦略会議」で、受入れ方針を作成します。同県が実施したアンケートでは、回答企業の56%が外国人の受入れを検討しています。
秋田県は「外国人活用促進協議会」を立ち上げ、人手不足が深刻な建設、福祉、観光などの使用者団体と意見交換を行うほか、セミナー等も開催しています。
山形県は、政府が受入れ拡大の姿勢(骨太の方針)を打ち出した後、補正予算を組み、外国人材活用に関する調査等を行っています。先進事例の収集等も実施する予定です。
朝型勤務など実践 ~「時差ビズ」11社を表彰 東京都~
東京都はオフピーク出勤などに取り組んだ企業を対象とする「時差Biz推進賞」を決定し、取組事例等を紹介しました。ワークスタイル部門では11社が選定されています。
JR東日本サービスでは、今夏の対象期間に社員の73%に当たる199人が時差出勤とフレックスタイムを実践。それに加えて早朝手当支給による朝型勤務の実施者44人、テレワーク実施10人、時短勤務9人となっています。他の受賞企業は、パソナテック、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスなど。
ちなみに、働き方改革関連の法整備で、労働時間設定改善指針が改正されています(平30・10・30厚労省告示375号)。そのなかで、労働時間設定改善に向けた取組として、①深夜業制限、②勤務間インターバル制度のほか、③朝型の働き方導入を挙げています。
高プロで省令・指針案示す ~改正労基法の施行に向け~
働き方改革関連法による改正労基法は平成31年4月1日施行ですが、高度プロフェッショナル制度関連の細則公布に向けて作業が最終段階を迎えています。
高プロは割増賃金の適用のない働き方なので、対象者を限定したうえで、十分な健康確保措置を講じるなど労働者保護に万全を期す必要があります。
業務は限定列挙で5種類(研究開発、金融ディーリング)ですが、裁量を失わせるような期限の設定や日時指定で会議出席を義務付けるようなものは対象から除かれます。
年収は一般労働者の「基準年間平均給与額の3倍相当」で、本人の同意(最長1年ごとに更新)も要件となります。タイムカード・パソコン上の記録等の客観的な手段により「健康管理時間」を把握し、健康福祉確保措置を講じますが、選択的措置として①勤務間インターバルは11時間以上、②深夜業は月4回以下、③時間上限は3カ月240時間以内等の内容が示されています。
2.身体障害の事実を申告しなかった・・・ 経歴詐称で懲戒解雇に?
Aさんは、コンピュータソフトの営業職としてB社に勤務していました。しかし、入社3カ月後に懲罰委員会の決定という形で懲戒解雇を通告されました。
理由は、Aさんが①内臓疾患で障害者認定を受けていたことを秘匿していたこと、②履歴書に職歴をすべて記載していなかったことです。
一般論として、経歴詐称は懲戒解雇事由になり得ますが、身体上の障害はデリケートな個人情報です。Aさんは、残業の多い職場で仕事を続ける中、障害を理由として会社に迷惑をかけるようなことはありませんでした。
このため、都道府県労働局長に会社の処分を撤回するよう助言・指導を求めたものです。
従業員の言い分
入社時に提出した健康診断書には、疾患で手術を受けたという事実は記載してありました。会社が障害者であることを問題視し始めた後、主治医に頼んで「仕事に支障がない」旨の診断書も提出しています。
履歴書に記載していない会社があったのは、何度も転職を重ねていると採用に不利だと考えたからです。
「身体に障害があると営業は務まらない」という固定観念に基づき、問答無用の解雇は納得できません。懲戒処分の取消しを要求します。
事業主の言い分
フットワークが必要な営業職採用に際しては、他の職種にも増して「健康」が重要な要素になります。身体的な問題だけではなく、顧客からの信頼が大切なので、経歴を詐称するような性格の人間は、営業として不適格と判断しました。
職歴を記載しなかった点については、「この期間に何か大きなトラブルがあったのではないか」いう疑いを抱いていますが、本人が理由を話すのを拒否するので、会社としても温情を与える余地がありません。
就業規則の「重要な経歴を偽り入社した」という懲戒解雇事由に該当するので、今でも会社として落ち度はなかったと考えています。
指導・助言の内容
B社は、身体・性格ともに営業に適さないと主張しますが、他の健常者と同様に支障なく業務を遂行し、取引先とのトラブルもなかったことが判明しています。
経歴詐称により、企業秩序に混乱をもたらした事実もなく、懲戒解雇には合理性が認められないため、処分を撤回するように助言・指導しました。
結果
両者が話し合った結果、Aさんは他の就職先を見つけたため、職場復帰ではなく補償金の支払いという条件で和解に至りました。
3.全国求人情報協会「若者の早期離職に関する調査」
大学卒業後、「3年で3割」が離職するという状況は、1990年代半ばから約20年間続いています。転職後の諸条件が、必ずしも新卒当時よりよくなるわけではありません。たとえば、賃金でいえば「1割以上の減少」が45.6%を占めますが、61.9%が転職に満足していると回答しています。

新卒者が離職を決めた原因(複数回答)を尋ねると、「仕事内容への不満」(51.5%)と「人間関係への不満」(40.9%)がツー・トップで高くなっています。生活時間の大半を会社で過ごすのですから、「職場がつまらない」なら長続きするはずもない理屈です。

4.平均賃金③
前回は、原則の平均賃金の計算方法を解説しました。今回は、例外的な算出方法について解説します。
1. 原則の計算方法(12条1項)

2. 平均賃金の最低保障(12条1項ただし書き)
賃金が「日給制」「時間給制」または「出来高払制その他の請負制」によって定められている場合、原則どおりの計算では低額となってしまうことがあるため、平均賃金の最低保障が規定されています。
(1)賃金が日給制、時間給制または出来高払制等の場合(12条1項1号)
「賃金の総額」を「その期間中に労働した日数」で除した金額の60%が最低保障額です。
算定事由発生日以前3カ月間に支払われた賃金総額/算定事由発生日以前3カ月間に労働した日数×60%
(2)賃金の一部が、月給制、週給制等の場合(12条1項2号)
次の①+②が最低保障額です。
①「月給制・週給制等の部分の総額」を「その期間の総日数」で除した金額
②上記(1)の金額
3. 日々雇い入れられる者の平均賃金(12条7項)
日々雇い入れられる労働者は、稼働にムラがあり、日によって就業する事業場を異にし、賃金額も変動ことがあるため、原則として、「一稼働日当たりの賃金額×73%」とされています。
4. その他算定し得ない場合の平均賃金(12条8項)
前回から上記2.までに解説してきた平均賃金の算出方法(賃金が通貨以外のもので支払われる場合(12条5項)および雇入後3カ月に満たない者(12条6項)については解説を省略)では算定が不適当となる場合は、厚生労働大臣の定めるところによります。具体的には、以下のようなケースがあります。
・試の使用期間中に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合(施行規則3条)
・日数および賃金総額の両者から控除される期間(試用期間は除く)が3カ月以上にわたる場合(施行規則4条)
・雇入れ日に算定事由が発生した場合(同条、昭和22.9.13発基第17号)
・算定対象期間中に、争議行為による休業期間がある場合、組合専従期間がある場合、育児介護休業法第2条第1号に規定する育児休業以外の育児休業期間がある場合(昭和24年告示第5号第2条)
このほか、賃金の種類や算定期間中の状況などによる賃金・日数・起算日に関する通達が数多く存在しますので、算出に際しての具体的事案は労働基準監督署などに確認するようにしてください。
5.実務に役立つQ&A 本人書名を会社代筆? 雇用継続給付の申請書
定年で再雇用となった方のために、高年齢雇用継続給付の申請をしました。本人から「申請のたびに記名押印が必要ですか?」と尋ねられて、困惑してしまいました。これまで他の高齢者からそういう要請はありませんでしたが、省略が可能なのでしょうか。
高年齢雇用継続給付支給申請書等をみると、事業主と並んで申請者本人の氏名(および印)の欄が設けてあります。申請の都度、本人が記名押印または署名するのが原則です。
ただし、現在は、事業主が被保険者から同意書を徴し、保存することで、被保険者の署名を省略できます。この取扱いは、平成30年10月1日からスタートしています。
60歳到達時等賃金証明書を出す際、また育児休業給付・介護休業給付関係の手続きの際も同様です。この場合、申請者氏名欄には「申請について同意済み」と記載します。
同意書自体は、ハローワークに提出する必要はありません(雇用保険業務取扱要領)が、受給中にトラブルが生じれば確認のために提出を求められることもあり得ます。同意書の保存期間は4年とされています。
6.助成金情報 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
厚生労働省が定めた「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」に基づき、仕事と介護の両立支援の推進を図り、事業主の取組みを促すことで労働者の雇用の安定に資することを目的としています。
支給額

※( )の額は、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」がその3年度前に比べて6%以上伸びていることなど、各助成金共通の生産性要件を満たした場合に適用。
※介護制度(勤務制限制度)とは、所定外労働の制限、時差出勤、深夜業の制限、短時間勤務制度を指します。
※中小企業とは、原則として次の表のAまたはBいずれかを満たす企業が該当します。
要件
「対象となる事業主」が下表(ア)を実施した後、さらに下表(イ)を実施することが必要です。


7.コラム ~外国人留学生の就職条件の緩和~
世間では2019年4月に施行予定の新しい在留資格、「特定技能」の話題が連日のようにニュースで報道されています。戦後から一貫してきた日本政府の外国人受入れ政策が事実上転換した訳ですから、大騒ぎになることも不思議ではありません。
しかし、私が気になるのはこのニュースよりも、外国人留学生の就職条件の緩和です。現状では「技術・人文知識・国際業務」で就くことができる職種は限定されています。しかし、2019年4月からは、年収が300万円以上、日本語を使う職場である、などの諸条件はありますが、業種や分野を制限することなく幅広い分野での職務が認められるようになる予定です。現状では具体的な職務範囲は示されていませんが、従来は単純作業として認められていないかった補助的な業務も含まれる予定です。また、この具体的な方法としては「技術・人文知識・国際業務」の扱い幅を広げるか、「特定活動」などの他の在留資格を活用することなどが検討されています。
その一方、法務省は外国人従業員の具体的な職務内容等を実態に即して把握するための新たな制度を設けるともいわれています。これは「翻訳・通訳」などとして在留資格を取得したが、実際には工場やキッチンなどで単純労働に従事している不正を把握するためのものです。具体的には申請書のフォームを詳しく変更したり、厚生労働省と連携したりすることで正確な情報を把握するなどが検討されています。
このように一方では規制を緩め、もう一方では厳しくする変更が予定されており、現在、適正に外国人従業員の在留資格を取得している企業については全く問題ありませんが、事実とは異なる虚偽申請などを行っている企業には厳しい対応がとられることが予想されます。
今後、外国人雇用は全ての日本企業にとって不可避の状況となりつつありますが、そのすべての企業に強いコンプライアンス意識が求められています。